映画「Ryuichi Sakamoto:CODA」を見た

以前から気になっていた坂本龍一さんに密着したドキュメンタリー「Ryuichi Sakamoto:CODA」を先日見ました。

公開されたのは2017年なんで去年ですが、その情報は知っていたものの単館上映みたいなかたちで展開するということで、さっと見にも行けず、配信か何かで見れないかなと待っていました。
そういうときに、確か坂本さんの公式twitterだと思いますが、Eテレで放映するということを知り、翌月だったもののばっちりto doリストに入れて録画し見ることができました。
「音楽と思索の旅を捉えたドキュメンタリー。5年間に渡る密着取材」とあるとおり、長い時間をかけての生活や過去の映像なんかも取り入れた作品でした。その間には、東日本大震災もあり、ご自身の病気もあり、いろんなことを経ているなという印象を受けました。以下、作品を見ての雑感です。

映画監督にはいろいろとひどい目にあっている

映画音楽もたくさんやってますが、語っているなかでなかなかこれはひどいな、という話もいくつかありました。
特にベルナルド・ベルトルッチ監督の逸話が語られていて、「ラスト・エンペラー」で、演技しにいったところで翌日撮影するシーンのバックの合唱曲をいきなり書かされた話とか、「シェリタリング・スカイ」で、録音しにオーケストラが待っているスタジオに着いたところ、ベルトルッチから曲すぐ直してよ、モリコーネはすぐ直してくれたよ、って言われて、オーケストラを30分待たせて慌てて直した(そしてその直したバージョンが素晴らしかったというオチ付き)とか、無茶振りもいいとこなエピソードがあって、外野から聞く分にはこれは大変だなあという感じでした。当人はもう必死だと思いますが。

クリエイターとプレイヤーのバランスを取っている感じがよい

自宅地下のスタジオで、グランドピアノでバッハを弾くシーンがある一方、YMOでその当時の先進性たるサウンドを奏でたり、新作の「async」で、なんとも形容しがたいようなテクノのような現代音楽のようなサウンドを奏でる姿があったり、いろんな面を持っているというかインプットに対してのアウトプットの幅が広いような印象を改めて受けました。
ベースはクラシックにあるというのは周知ですが、御本人の興味とか作品に表したいかたちというのが単一でなくいろんなかたちなんだろうな、ということがよく分かる作品だと思います。

原発に対する姿勢はともかく音楽家としての行動が素晴らしい

先に書いたとおり、密着期間中に東日本大震災が起こります。作中の中で、原発反対デモが起こり、坂本さん自身もデモに参加しマイクで発言などしています。私自身は原発は恒久的には維持し得ないものの、単純に反発することは現状に対する対応としては適切でないように思いますが、坂本さん自身は津波で被災したピアノを再生し、被災地でもコンサートを開き活動などをされていて、その行動には敬意を表したいと思います。
作中で、1999年に発表したオペラ「LIFE」の映像がありましたが、原発の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーのアリアという作品があり、以前からスタンスは変わっていない感じがしました。この作品は興味を持って見ていましたが、自分なりに消化はできていませんでした。

フィールド・レコーディング楽しそう

この作品のジャケットは、坂本さんがバケツをかぶった姿ですが、これは自宅で雨が降ってきた際に、雨粒が奏でる音をiphoneを使って録音ときにバケツをかぶった様子を撮ったものです。
これ以外に、山中に行ってそこにあるゴミを叩いてその音を録音したりするシーンもあり、単に音声素材を撮るときも何らかの姿勢を持って作品に活かす、というのは、坂本さんが表立ってやっていることかと思います。
スタジオ・DAWを使っての制作活動を捉えた映像も、もちろん興味深いんですが、その前のところにも、大いに注目したいと思いました。